熊本のきものお手入れ処 田崎染工です。
日々、和服のお手入れ・メンテナンス業務に携わり、今までに少なくとも累計2万枚以上のお着物を直してまいりました。
一言で「お手入れ」と申しましても、一枚々しみの状態や程度が異なっており、それこそ「十枚十色」です。
地味な職業ですが、皆さまに当店の仕事の中身と技術力を知っていただきたいという願いを込め、現役のしみぬき職人の仕事の舞台裏を写真を交えて綴ってまいります。お着物に関するさまざまなご相談ごとなどお気軽にお電話ください。
当店での名古屋帯の事例です。
胴部に黄変が多数発生しています。
胴部のafter画像です。
次にお太鼓部分です。緑のシールがある白場のしみぬきをします。
今回の名古屋帯にかぎらず袋帯などの「帯の黄変のしみぬき」は非常に難しいです。
理由はいくつかあります、、、、、、、
↑帯の生地は表と裏とでは糸使いの関係上、色の配置が真逆になります。
今回の帯で説明するならば白場の真裏はエンジ色、エンジの裏は白場になります。
備えずに洗ってしまうと、このエンジ色が白場に滲んでしまうという憂き目に遭います。
↑また刺繍糸が裏面中に横断しているので、非常に作業が難航します。(糸を掻き分けて作業するため)
帯地そのものが厚く硬いので洗浄と乾燥にも着物の何倍もの時間を要します。
帯の黄変のしみぬきが難しいおもな理由
①織り糸そのものに繊細な装飾(金銀糸、和紙素材を含んだ糸、etc)が施してあるため薬品、熱、水に耐性が弱い。
②白場が裏糸の色で滲んでしまう可能性が高い。
③生地の厚み、刺繍糸の存在などが作業効率を損なう。
つまり使用されている糸の種類によってはまったく手出しができない帯もあります。(高額な帯に多いです)
↑お太鼓部分のアップ画像
↑お太鼓のafter画像
↑垂れ部分 着用時見える部分のしみぬきですので「鹿の刺繍」の首から下を重点的にしみぬきしています。
この画像のように一つずつ段階的に処理していきます。数えきれません(笑)
↑垂れ部分のbefore→after画像です。
お預かりした時からの黒ずみなども可能な限りきれいに処置しました。
帯のしみぬきは本当に難しいです・・・・もっともっと研鑽を積まないといけませんね。
今回は締めた時に見えるところだけのしみぬきでした。
よって胴部、お太鼓、垂れ部分をしみぬきしました。
【今回のしみぬき参考料金 15,000円 ※消費税別】