熊本のきものお手入れ処 田崎染工です。
日々、和服のお手入れ・メンテナンス業務に携わり、今までに少なくとも累計2万枚以上のお着物を直してまいりました。
一言で「お手入れ」と申しましても、一枚々しみの状態や程度が異なっており、それこそ「十枚十色」です。
地味な職業ですが、皆さまに当店の仕事の中身と技術力を知っていただきたいという願いを込め、現役のしみぬき職人の仕事の舞台裏を写真を交えて綴ってまいります。お着物に関するさまざまなご相談ごとなどお気軽にお問い合わせ・お電話ください。

 

田崎染工

このような柄を「疋田柄」(ひったがら)と言います。
本来は「疋田絞り」に由来しているのですが、「疋田柄」は本当の「絞り柄」ではなく、
「絞り風プリント」になります。
この画像のように、白場に黄変が発生した場合が「職人泣かせの難しい仕事」になります。

今回は「シミヌキ」で直る例、直らない例をそれぞれ紹介いたします。

 

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柄が消失しないように作業をしなければなりません。
まずは必ず袖底などの端布部分でテストをおこないます。
テストの時点で、柄が消える場合は「胡粉」などで白場を塗るという策へと方針を変えます。
ただ、胡粉で塗るとどうしても「塗ってる感」出てしまうので、個人的には好みの選択ではありません。
やはり本来の正攻法である「シミヌキ」で対処したいところです。

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今回はきれいに落ちましたが、非常に難易度の高いシミヌキになります。
「赤系」は比較的丈夫な色なので何とかなりました。
ただ、同じ「赤系」でも堅牢度が悪く、シミよりも先に色が壊れ
全く「シミヌキ」できない弱い「赤」もあります。

この違いばかりは、実際に生地の端っこでテストするまで判断できません。

 

 

次に紹介するのは「シミヌキ」が無理な例です。

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同じ「疋田柄」でも鮮やかな「紫」です。
私の経験上、ほぼ100パーセント 黄変が白くなるよりも先に「紫」が変色してしまいます。
今回のような紫や鮮やかな青(ロイヤルブルー)などは一番壊れやすいく弱い色です。

 

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袖底を解いて生地の耳部分で耐漂白のテストをおこなった画像です。
「紫系」、「鮮青系」、「緑系」はほぼこのように変色してしまいます。
一時的に堅牢度を高める手段を講じても変色を防ぐことはできませんでした。
1㎝四方くらいのシミが数ヶ所程度ならば、修整も可能でしょうが、今回の大きさのシミでは困難です。
しかも、この画像よりも大きく、濃いシミがたくさんにあります。

残念ですが、「シミヌキ不可」という結論になります。

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次の手として「白い部分を顔料で塗ってシミを隠す」という方法もあります。
一つずつ塗りつぶしていく根気のいる作業ですが、
費やす時間に見合うほどの「職人としての達成感」はありません。反対に虚しく感じる時があります。

どうしても「塗った感」が分かり、斜めから見るとその箇所だけが浮いて目立ちます。
この手の「シミヌキ不可な品物」に出会うたびに「なんか方法はないものか?」と気落ちします。

 

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塗り終えた状態です。
少し離れてみた方が、目立ってしまう時もあります。
個人的にはあまりオススメする修整方法ではありませんが、「それで結構です」とおっしゃるお客さまの
リクエストの場合にはこの方法で対処します。

 

 

今回紹介した「絞り類」、「江戸小紋類」や「吹雪柄」などの「白い部分と染色部分との共生で構成される柄」
は一度黄変が出てしまうと修整が非常に困難です。
その事実を忘れずに、着用後の「お手入れ」を欠かさぬことが長くきれいに維持できるコツです。

 

【今回の修整参考料金 ????円ほど ※消費税は別途になります】 

※あくまでも当店のしみぬき実績事例の紹介であり、
その他すべての衣料品トラブルの解決をお約束しているわけではございません。
できるもの、素材的・生地の状態的に修整が不可能なもの、
当店に来るまでに散々シミヌキ行為がされてしまった残念なもの…正直いろいろあります。

しみぬき、お着物のお手入れ・メンテナンスはぜひ当店にご相談ください。
最後まで読んでいただきましてありがとうございました。