熊本のきものお手入れ処 田崎染工です。
日々お着物のお手入れに携わり、今までに少なめに数えても累計2万枚以上のお着物を直してまいりました。
お手入れと申しましても一枚々しみの状態や程度が異なっており、それこそ「十枚十色」です。
地味な業界の職種ですが、皆さまに当店の仕事の中身を知っていただきたいという願いを込めて、現役のしみぬき職人がお着物のお手入れの舞台裏を写真を交えて綴ってまいります。

 

 

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しみぬきを終えた着物をたたんでいると
ふと目に入ってしまいました・・・妙な変色部位が。
中心の黄味を取り巻くように赤味があります。
下前の腰上げから五寸ほど下であり、通常だと着用時には隠れてしまう場所です。

一見して「なんか変だな」という違和感がありました。

「もしかして!」と思い霧吹きしてみたところ、、、、。

 

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↑「やっぱりそうか・・・・」
このようにきれいな円形に水が浸透するということは、この変色部位が過去に
どこかで何らかの処置がされた可能性がグンと高まります。
何もされてない場所ならば、このように浸潤することはまずありません。
拡大鏡で見るとやはり「地直し=染色補整」した痕跡がありました。

 

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↑着れば隠れてしまう場所ですし、直すかどうかしばらく考えました。
でもやはり職人としてそのまま見過ごすことができません。
先ほどの変色のままでは良い修整はできないので、当方で漂白した画像です。
もちろんこの箇所については料金はいただきません。

 

 

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↑最初から比較するとずいぶんマシになったのではないでしょうか。
修整作業には30分ほど要してしまいした。
気になりだすと見過ごせない性格なので、この程度のサービスはしょっちゅうです。