今日はお着物が汚れてしまった場合の「応急措置」について書いてみようと思います。
実際にお電話でも「応急措置」についてはかなりのお問い合わせがあります。

まず、いかなる場合も

絶対に慌てないでください。
シミをいじらないでください。
シミをこすったりしないでください。

熊本 田崎染工

↑このようにソースなどが付着してしまってもまったく慌てる必要はありません。
※今回の投稿用に当店所有の残布にわざとソースをこぼしてみました。

 

次に「応急措置」っぽいけれど

絶対にしてほしくないことがあります。

❶こする、たたく(特に濡れたおしぼり、ハンカチ等は×)
❷熱を加える
❸自分でシミヌキに挑戦する

この3つは絶対にしないでください。

本来ならきれいに落とせる汚れやシミも取れなくなってしまいます。

元々は爪楊枝の先端くらいの小さなシミが気になって、お客さまがご自分でシミヌキに挑戦し
手のひらサイズまで大きくしてしまったという悲しい事例もたくさんございます。

熊本 田崎染工

↑濡れたおしぼり等でたたいたり、こすってしまうとすぐに生地表面が傷んでしまいます。
 数回こすっただけで取り返しのつかないダメージになってしまいます。
   また水分でシミの範囲が大きく広がってしまいます。
 さらにたたくことで繊維の奥深くにまで汚れやシミが入り込んでしまいます。
 生地の表面が摩擦で傷んでしまった場合は修整が困難になります。

濡らしたおしぼりやタオルなどでこする、たたくは絶対にダメです。
「おしぼりでたたいた結末」はここをご覧ください。

熊本 田崎染工

↑次にドライヤー等で熱を加えて乾かすという行為も絶対にダメです。
飲み物をこぼしたときなどは「乾かしてみよう!」と思うかもしれませんが、強制乾燥はNGです。
 タンパク質などは過熱してしまうと凝固してしまい落とすのが困難になってしまいます。

絶対にドライヤー等で乾かさないでください。

 

では、どう処置するのが最善なのでしょうか・・・・

実は何もしないというのが一番良いのです。
我々職人にとっても「何もされていない状態」が
一番ありがたいです。

慌ててこすったり、たたいてしまったせいで台無しになってしまったお着物をたくさん見てきました。

お着物を大切に思うのであれば専門店に相談されるのが一番です。

シミを自分で広げてしまったら、その分余計にシミヌキ代を払うことになってしまいます。
金額が高くなるだけならば、まだラッキーな方なのかもしれません。
最悪の場合は修整ができないほど傷ませてしまうことも多々あるんです。

では、専門店に持ち込むまではどう対処すれば良いのか、、、、、

 

熊本 田崎染工

↑乾いたハンカチ、タオルやティッシュ等で水分だけを優しく移し取ってください。
この時も絶対にこすったり、たたいたりしないように用心してください。
そうっと優しくです。

現状よりもシミが広がったり他の箇所に付着させないための措置です。

 

あとはなるべく早くシミヌキの専門店で適切な処置をしてもらいましょう。
ご自分でシミヌキして失敗されるお客さまが本当にたくさんいらっしゃいます。

ここ最近は動画投稿サイト等で欲しい情報が簡単に得られるようになり、
「家庭で簡単にできるシミヌキ」などと紹介してあるところもあります。
しかし
ご自分でしみ抜きに挑戦→やっぱり失敗してしまった→当店に持ち込み依頼
というケースがとても多いです。

この投稿を読んでいただいた方だけにでも、「正しいシミの応急措置」が伝われば良いなと願っております。