熊本のきものお手入れ処 田崎染工です。
日々お着物のお手入れに携わり、今までに少なくとも累計2万枚以上のお着物を直してまいりました。
お手入れと申しましても一枚々しみの状態や程度が異なっており、それこそ「十枚十色」です。
地味な職業ですが、皆さまに当店の仕事の中身と技術力を知っていただきたいという願いを込め、現役のしみぬき職人がお着物のお手入れの舞台裏を写真を交えて綴ってまいります。

 

本日はとてもお問い合わせが多い「裏地の交換」のついて書きます。
お着物初心者の方にも読んで理解してもらえるように説明したいと思います。
当店では「お仕立て/補正」のカテゴリーに加えています。

お着物の裏地は大まかですが、
①「胴裏=どううら」
②「衿裏=えりうら」
③「袖裏=そでうら」
④「八掛=はっかけ」※袖口布も含みます
の4つのパーツから構成されています。このうち①~③は通常は同一の胴裏生地から裁断します。
素材も絹100%の他にもポリエステル、アセテートなどさまざまですが、やはり正絹(しょうけん=絹100%)が最もメジャーな素材です。

新品時だと真っ新で純白な裏地ですが、年月が経過して保管の状態が悪いと目も当てられぬ状態になってしまいます。

 

胴裏交換 田崎染工

↑広範囲にわたり黄変が発生した胴裏です。 衿裏部分にも黄変が発生してしまっています。

かなり昔は胴裏の生地は糊を引いて、生地にハリやコシや持たせていました。
そうすることで安いグレードの胴裏生地でも、それなりの品へと「お化粧」がされていたのです。
しかし糊成分は湿度の影響などを受け黄変化しやすいため、この画像のように茶色く変色が広がってしまうのです。

↑このように裏地が黄変だらけになってしまった場合、
当店では「胴裏の部分交換」をオススメしております。

「洗い張りをしてお着物を全部解かなければできない」というお店もありますが
当店ならば部分補正だけで裏地を交換することができます!!


つまり
洗い張りの費用が不要+部分補正でOK=トータルで安いというメリットがあります。

もちろんお着物の状態次第では、「洗い張り→お仕立て直し」という場合もありますが
お着物の表地に全体黄変などの発生がなければ部分交換だけで交換ができます。

 

当店の「胴裏の部分交換」は
①胴裏
②衿裏
③袖裏
上記の3箇所を交換いたします。
「ん?! どうして袖裏まで交換の必要があるの?」と思われるかもしれませんが、
理由は袖裏まで黄変が発生しているケースがほとんどだからです。

ごく稀に、袖裏だけはきれいなお着物もございますが、その袖裏からのちのち黄変が発生してしまう可能性は充分にあります。
せっかく新しく交換した衿裏や胴裏に、袖裏から黄変の元凶が移ってくるかもしれません。また生地の白度に差も出ます。
そういったリスク回避のために①~③の同時交換をおこなっております。

 

田崎染工 熊本 しみぬき

↑このお着物は以前に胴裏だけを交換されたのだと思います。
 胴裏は白いですが袖裏は全体に茶色くなってしまっています。
 袖裏は袖の振りから見えてしまう部分なので、ここまで変色している場合は交換される方が良いと思います。

 

 

胴裏交換 田崎染工

↑新品の胴裏生地へ交換後  もちろん袖裏も新品に交換してあります。
幸いにも胴裏以外は黄変がありませんでしたので、ほとんど「新品状態」に戻りました。
ピカピカの胴裏のお着物に袖を通すときはさぞかし気持ちの良いものでしょうね~ ♪~♪ d(⌒o⌒)b♪~♪ランラン

 

胴裏交換 田崎染工

この記事をご覧の皆さま、タンスの中のお着物の胴裏は大丈夫ですか?
長年タンスにしまいこんだままのお着物は一度出して確認されてみてくださいね。
年に数回、風通しの良い場所に数時間程度かけて湿気をとばしてくださいね。
その際、太陽光には当たらぬようしてください。お着物の色ヤケにはご注意ください。

さて、気になる交換費用ですが
お着物の種類と生地のグレード(2種類)により以下のようになります。

振袖・留袖以外のお着物  12,000円+【普通生地10,000円/上生地12,000円】
振袖           16,000円+【普通生地15,000円/上生地18,000円】
黒留袖(比翼付き)    20,000円+【普通生地10,000円/上生地12,000円】
※消費税は別途にいただいております。

胴裏生地をお客さまでご用意される場合は、上記の補正代金のみで承っております。

しみぬき、お着物のお手入れはぜひ当店にご相談ください。

最後まで読んでいただきましてありがとうございました。